指導医コメント

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消化器外科部長 宇田川晴司

消化器外科部長 宇田川晴司

JCMTの歴史も30年を越えましたが、消化器外科はその活動開始当初から深く関わって参りました。本プログラムによって海外から当院に来られる先生方はみな志高く、本国でも将来の医療を支えるリーダーとして嘱望されている方々ばかりであり、研修中は知識の吸収に非常に積極的です。いまやASEAN諸国を中心にJCMTのプログラムを経験した若きリーダーが数多く存在し、海外の学会や専門誌などでその活躍の機会に触れることも非常に多くなっています。そして嬉しいことは、皆がJCMTで学んだことをその後の活動の基盤として位置づけ、誇りと感謝の念を持ち続けてくれていて、Toranomon Familyとも呼びたい連帯感を持ってくれていることです。

JCMTの活動はプログラムに参加するfellowの方々にとって有意義なだけではありません。
 20年以上前の私自身がそうであったように、当院で学ぶ若い医師たちが、英語で医学論議をする機会を持ち、自分たちが日々行っている医療が世界に対して誇るべき内容を持っているのだと自覚すること、そして明日には自分たちがそれを発展させなければならないのだと気づくことは、当院にとっても、広く言えば日本の明日の医療界にとっても非常に意義深いことだと考えています。

時代の流れとともに、JCMTの活動形態も少しずつ変化していますが、その基本精神、そして何より一番大切な人と人とのつながりは、脈々と受け継がれています。この深く大きな、そして美しい流れを支えてくださっている協賛企業の方々ほかご関係の多くの方々に心より御礼を申し上げるとともに、この流れが途切れることなく、さらに発展の方向に向かってゆくことができますよう、今後とも更なるご支援をお願い申し上げます。

消化器外科部長 宇田川晴司

間脳下垂体外科部長 山田正三

間脳下垂体外科部長 山田正三

私は虎の門病院の脳神経外科、間脳下垂体外科在籍を通し約20年の間、JCMT研修プログラムに参加された研修生方と関わりを持ってきました。研修に来られる先生方には手術を中心とした技術指導、特に脳神経外科に必須のmicrosurgical techniqueの向上を目的にネズミを利用した微小血管吻合の指導等を行ってきました。日本とは医療環境が全く異なるこれら東南アジアを中心とした諸外国の先生方と医療を通して互いに交流を持てることは、大きな刺激であり喜びでもあります。

また虎の門病院での指導のみならず、帰国後の諸先生方の実情の視察と新たな技術指導を目的に、マレーシア、インドネシア等、研修生派遣国へ出向く機会も有りました。現地では講演会を行ったり、手術技術指導などを行いましたが、研修生の先生方が自国で指導的立場に立って仕事をされている姿を見る事は私にとって大きな喜びでもありました。また講演等を通じ、現地のJCMT研修生以外の先生方とも交流がもてた事は互いにとって極めて有益であったと確信しています。現地で手術を行う事で、その国の医療の現状がとても良く理解出来、私にとってもその国に合った最適な指導がどのようなものであるかを再認識する機会となりました。さらに再研修プログラムで且つて研修に来た先生方と再会する機会もあります。それらの、彼らとの長年の交流を通し、医師としての関係を越えた友情が芽生えた事は、私にとってこの上も無い貴重な財産であると同時に大きな喜びでもあります。

近年経済においては日本から東アジア共同体構想が打ち出されていますが、医療においても身近なアジアの医師たちと互いに刺激し合い、友好関係を構築して行くこと、そして先達たる日本がその中心的役割を果たして行く事は極めて重要であると確信しています。私も微力ながらJCMTを通じて今後もこの任務の一端を担えれば望外の喜びであります。

間脳下垂体外科部長 山田正三

消化器外科医長 的場周一郎

間脳下垂体外科部長 山田正三

私は、今までにインドネシア、ベトナム、タイの3カ国をJCMTのフォローアップ研修プログラムで訪れました。私の専門は大腸癌の腹腔鏡下手術ですが、これを中心に、タイでは実際の手術の実技指導を、他の2カ国では講演を実施しました。

日本では検診制度が発達していることもあり、非常に早期で発見されることが多く、諸外国と違って、病巣の大きさは比較的小さい傾向にあります。腹腔鏡手術機材などの導入も、比較的どこでも容易であり、より低侵襲を望む国内の状況と相まって、瞬く間に腹腔鏡下大腸癌手術は発達してきました。

しかし東南アジアの多くの国では状況が異なっており、自ずと腹腔鏡下手術の指導も国内とは違ってきます。より大きく、進行した状態が多い東南アジアでは、一般的に手術を困難なものにします。腹腔鏡下手術導入においては、簡単な症例でlearning curveを上げてから困難症例に立ち向かうのが理想的ですが、最初から困難症例をしなければならないという問題があります。また腹腔鏡機材も新しくて良いものは少なく、限られた道具で手術を行わなければならず、それが状況をより困難なものにしています。しかし、疾患状態や機材類が日本より困難な状態にあるにもかかわらず、これ等の国々の医師の熱心さは非常に心地良く、まっすぐな瞳にはすがすがしさを感じました。一方、恵まれた環境で手術を行ってきた私達にはなかなか気付かない面も見え、現地での指導を通して、より一層手術の理解度が増すのを感じました。

確立された手術というのは全世界、どこでも、誰でも行えるものが優れた術式です。腹腔鏡下大腸癌手術もまだそういった意味では発達途中であり、優れた術式を確立するためにもこのJCMTは役立つものと感じています。

間脳下垂体外科部長 山田正三